Tights in the city 2013 「消える色、欠けた光」
おそらくこの街は、人の欲望がそのまま色に置き換えられている。
そこに統制された意思など微塵もなく、ただ好き勝手に溢れかえっているだけだ。
そして昼夜を問わず、あまたの欲望を煽るために光は希望という名の価値を持つ。
一つでも多くの色がある場所へ。
少しでも明るい光のある場所へ。
こうして人の一生は、色と光に振り回され続けるのだ。
この街で人生の半分を過ごしてしまうと、こぼれ落ちた涙の粒だけ、自分の中から色が消えてゆく。
希望がひとつ失われるたび、突然電球が切れるように、心に暗さが増す。
そんな荒涼とした気持ちのまま見る夢は、統制を伴う色彩で構成された地方の田園風景ではなく、モノクロで乱暴な線画のようなものばかりだった。
あの頃は良かったと、口に出して振り返るのは簡単で愚かしい。
だが目の前に見えている景色は、色と光を失った分、同じ街であっても違う世界なのだ。
春の世に咲く花は、どれも無条件に華麗だった。
しかし、寒く閉じられた冬の世に咲く花には、体温を微かに伴った、内向きの妖しさがあることを知る。
それを残った僅かな色で補色をする。
雲の隙間から射す光。それがかすかな希望であるならば、心のスクリーンを照らしてほしい。
きっとそこに映し出されているものは、経験したことのない美しさ、そのものであろう。
by sukekiyo2008 | 2013-04-21 21:17 | その他